20000ヒット記念特別企画 全シリーズ主要キャラ出演座談会

 

 
 

関係者各位 殿

謹啓 時下ままますご清勝のこととお慶び申し上げます。
このたび、柏枝真郷のホームページ、「ACORN」が20000ヒットを記録し、その記念イベントといたしまして、キャラの皆さまの座談会を開催する運びとなりました。
皆さまご多忙のこととは存じますが、万障お繰り合わせのうえ、ぜひともご出席いただいきたく、ご案内いたします。
なお、出席予定メンバーは添付資料をご覧ください。
                                    敬具
                              不肖の作者 柏枝真郷拝

 
 
 
 

==出席メンバーリスト==
 クラーク・デラウエア
 アンソニー・フォーセット
 ダニエル・ドレイク(副司会)
 遠野遼一郎  
 宮城篤史
 遠野美雪
 毛利直樹(司会)
 曽我部綱彦(副司会)
 シドニー・ホプキンス
 広瀬伸行(通訳)
 ロッド・ハーシュ

 吉家邦夫
 築島朋也
 板倉恒之
 岡崎祐司
 阿部陽平
 長谷川文彦
 野々村清美(軽食・飲み物担当)
 長谷川聡美(同上)
                ==以上==

 
 

 

◆◆とある国、とある集会場の厨房にて◆◆

野々村清美「ああ忙しい。17名もの飲み物と軽食を用意しなきゃならないなんて……。それにしても、ここ、どこかしら? 私ニューヨークにいたはずなのに……」
長谷川聡美「あら、初めまして。ニューヨークからいらっしゃったんですか?」
清美「ええ、そうです。こちらこそ、初めまして。お着物がよく似合ってらっしゃいますね」
聡美「ありがとうございます。小さいころから着てるので、着物のほうが動きやすいんですよ。それより、いったい何の集まりなんでしょうね?」
清美「さあ、何なんでしょうね。私も作者の柏枝から、突然呼び出されて、飲み物と軽食を用意するように、って言われただけなんですよ。で、私は洋食のほうを担当するように、って」
聡美「あ、私もです。私は『和食をお願い』って言われたんですけど。外国のかたもいらっしゃるみたいですね」
清美「あ、じゃあ、広瀬さんのお友達の刑事さんたちもいらっしゃるのかしら」
聡美「広瀬さんって?」
清美「私の同僚です。あ、私、旅行会社のニューヨーク事務所に勤務していて」
聡美「まあ、それは、素晴らしいですね。私はまだ、日本から出たことがなくて……」

◆◆同時刻、とある集会場の控え室◆◆
毛利直樹「今日こそ、拙者の晴れ舞台ですな。 なんか武者震いがしてきましたぞ。では、身なりの確認を。おめでたい日にふさわしく、たすきを源平ウエディングでもご披露したように、真っ赤な縮緬の帯を大きな蝶結びにしてみましたが、いかがでしょう?」
広瀬伸行「はあ……まあ、似合ってますが……。あの、おれ、『同時通訳をしろ』って作者に呼び出されたんですけど……」
曽我部綱彦「なに、君が通訳だって?」
伸行「ええ。あの……あなたは?」
綱彦「ぼくは、警視庁捜査第一課の曽我部警部補だが」
伸行「曽我部……?」
毛利(伸行に耳打ち)「あなた、警部補だなんて真に受けちゃいけませんよ。なにしろこの男は、あの曽我部物産の御曹司のくせに、冗談で刑事をやってるような悪党ですからな」
伸行「曽我部物産……?」(ってことは、父の上司の息子になるんだろうか……)
綱彦「なにをこそこそ話してるんだ?」
ダニエル・ドレイク「……日本語がさっぱりわからないや。ノブ、訳してくれる?」
伸行「ダニエル……なんでここに?」
ダニエル「副司会者をやれというアホな作者の命令でね。もうひとり、ツナヒコとかいう男も副司会なんだそうだけど」
伸行「ツナ……あ、曽我部綱彦なら、彼がそうだよ」
綱彦(金縁眼鏡を光らせて)「ぼくには通訳は不要だ。君も副司会者だって?」
ダニエル「みたいだね。君、オリーブ色が好きなのかい?」
綱彦「好みの色だが、なにか?」
ダニエル「いや……日本人で、そういった色のスーツを着ている人を見たのは初めてだから」
綱彦「そうだろうね。まあ、凡人には着こなせる色じゃないだろう。君の薄紫色の上着も、なかなか似合っているよ」
ダニエル「……それは、どうもありがとう。(必死に笑いを噛み殺している)」
毛利(伸行の通訳を聞いて)「拙者の、この真っ赤なたすきはいかがですか? おめでたい席にぴったりかと」
伸行「……(これも英語に訳さなきゃいけないんだろうか……)」

◆◆同時刻、とある集会場の第3集会室◆◆
阿部陽平「なんなんだ、この変な集まりは?」
長谷川文彦「ホームページの2万ヒット記念イベントだって聞いたけど」
阿部「ホームページって柏枝のだろ? ったく、おれたちを失業者にした張本人のくせに、なんで、おれたちが協力しなきゃいけないんだよ?」
文彦「いいじゃない。ぼくたちが出会えたのも、失業したおかげなんだから」
阿部「そりゃまあ、そうだが……」

築島朋也「先輩、急がないと遅刻しますよ」
吉家邦夫「別に遅刻したって、いいだろ。どーせ、あの柏枝の企画なんだしさ」
築島「……先輩……」
吉家「……なんだよ?」
築島「本当は出席者のリストが気になってるんじゃないですか? 例のお見合いの……」
吉家「え? ああ、長谷川聡美さんだろ? 別に気にしてなんか……。それに彼女は座談会の出席者じゃなくて、料理と飲み物担当なんだしさ」
築島「……無理しなくてもいいですよ」
吉家「バカ。別に無理してないだろ。それより、このリストにある長谷川文彦って……おれの記憶間違いじゃないければ、聡美さんの兄貴じゃないかな」
築島「お兄さんですか? お見合いの彼女の……」
吉家「たぶん……。見合い写真についてた身上書に書いてあった記憶が…。実際に会ったことはないんだけどさ」
築島「……先輩、やっぱり気になってるんじゃないですか」
吉家「しつこいな。気にしてないだろ。だから、さ……」
岡崎祐司「あ、吉家たちだ」
板倉恒之「ふん、あいつらも一緒か。しかし呉越同舟どころか、無茶苦茶な集会だな」
岡崎「いろいろな人がいて、面白そうだけどね」
板倉「たしかに、平凡なサラリーマンとは縁のなさそうなメンバーも多そうだな」
岡崎「そうだね。でも、こんなにたくさんのメンバーだと司会者も大変そうだね」

クラーク・デラウエア「日本人が多いな」
アンソニー・フォーセント「まあ、柏枝が日本人だから」
クラーク「言葉の問題はどうするつもりなのかね。通訳がひとりきりで大丈夫なのか?」
アンソニー「てんてこ舞いになりそうだよね。司会者は日本人みたいだし、副司会のダニエルは、日本語は挨拶程度みたいだし……。もうひとりの副司会の曽我部綱彦って、どんな人だろう?」
クラーク「さあな。柏枝が書くキャラだから、また変人かもしれん。第一、座談会といったって、議題はいったい何なんだ?」
アンソニー「僕もそれが不思議だったんだけど……。何の座談会なんだろう?」

遠野美雪「篤史、父さん。ほら、急いでよ。ぼく、こういう席に出るの初めてだから、なんかわくわくしちゃうな」
宮城篤史「……(溜息)」
遠野遼一郎「面白い顔ぶれだな。あいかわらず、いわくありげな連中ばかりだ」
美雪「ぼくが最年少かな。へへへ、なんか嬉しい。あ、そうだ、篤史。ばーちゃんにお弁当をつくってもらったんだけど、食べる?」
篤史「あ、いいよ。ここでも用意してるみたいだし、そのうち飲み物と一緒に出るんだろ」
美雪「篤史……せっかく、ばーちゃんが(泣きべそ)」
篤史「あ、わかった。わかった。じゃあ、食べよう」
美雪「ほんと? ええとね、今日はね、太巻き寿司なんだ。えーと、この切り口がお花の形になってるのが、いいかな。篤史、あーんして」
篤史「あのねえ……(遼一郎のほうを、ちらりと見る)」
遼一郎「……(無関心)」
美雪「篤史? ねえ、いらないの? あーんして」
篤史「わかったわかった。食べるよ。あーん」
美雪「はい。……どう? おいしい?」
篤史「あ、うん。おいしいよ」

シドニー・ホプキンス「なんなんだ、いったい。この変な集まりは。逮捕権があったら、全員、逮捕したいような連中ばかりだぜ」
ロッド・ハーシュ「ご機嫌ななめだな」
シドニー「当たり前だろ。いくらニューヨークの治安が一昔前に較べて良くなったといたっって、警察が忙しいのは変わらないのに、なんで、座談会なんてのに出席しなきゃいけないんだ?」
ロッド「……それが理由かい?」
シドニー「決まってるだろ」
ロッド「相変わらず、素直じゃないね。リストの『同時通訳』の誰かさんが気になってるくせに」
シドニー「……おれは気になんか……。言葉の問題があるから、通訳は必要だろうしさ」
ロッド「へえ……(笑いを噛み殺している)」

◆◆約20分後、とある集会場の集会室◆◆
(ここからは、伸行が通訳をしている、という前提のもとに話が進みます)
清美と聡美が飲み物を運んでくる。
毛利「皆さま、お待たせいたしました。では、これより、20000ヒット特別企画・座談会を開催いたします」
美雪「(拍手)毛利さん、かっこいい! 頑張って!」
毛利「ありがとう、美雪ぼっちゃま。では、皆さま、お飲物をお取りください。まずは、乾杯といきましょう」
綱彦「ちょっと待ちたまえ。座談会だろ? 披露宴じゃなくて。なぜ、乾杯をする必要がある?」
ダニエル「堅いことは抜きにしよう。いいじゃないか。飲み物で喉を潤したほうが、話しやすいだろう」
毛利「そうそう。まずは喉を潤すのが肝心かと。では、乾杯!」
全員(大半は、いやいやながら)「乾杯!」

    

清美と聡美が厨房に下がり、男たちだけになってから。

毛利「では──本題に入ることにいたします。議題は、『皆さんが、いかにして日ごろの苦悩を耐えているか』です」
綱彦「耐えているんじゃない。『耐えさせられて』いるんだ。(と、遼一郎をにらむ)あの変態サドのおかげで……」
毛利「この不埒者め。拙者が敬愛する遠野センセに対して、何を失礼なことを」
伸行「……(『へ……変態サド』って、なんて訳せばいいんだ?)えー(赤面)サディスト……」
シドニー「おれは帰る。ノブも帰ろうぜ」
ダニエル「まあまあ、シドニー。気持ちはわかるが待ちたまえ。ほら、毛利と綱彦。司会者が揉めちゃ、話が進まないだろう」
毛利「仰せのとおりでござるな。えーでは、あらためて、こちらから指名いたします。出席者も多いですしな。えーでは、まず、シリーズが完結したばかりの、阿部、長谷川の御両名にお話をおうかがいいたすとしますか」
阿部「おれ? あー苦悩って言ってもなあ。まあ、おれの場合は、長谷川が……」
文彦「ぼくが何か?」
阿部「だから……あー……」
毛利「文彦さんの、ご苦悩はいかがでしょ?」
文彦「え? えーと、苦悩なはいけど……。できれば、阿部くんが西荻に引っ越ししてくれると、泊まりにいくのに便利かなって程度で……」
阿部「こら、長谷川。何を──」
文彦「え? なんか、まずいこと言った?」
吉家「(築島に向かって)西荻ってことは、やっぱり聡美さんの……」
築島「みたいですね。でも……ってことは、お兄さんも、そうだったのか……」
吉家「驚いたな。聡美さん知ってるのかなあ」
毛利「ほら、そこの内緒話してる──え、吉家、築島の御両名。今度は、おふたりのお話をおうかがいっしましょう」
吉家「え? おれは……別に、なあ? 築島」
築島「え……ええ。まあ、一緒に暮らしてるし……」
文彦「いいですね。一緒に暮らしてるなんて」
吉家「え? はあ、まあ……その家賃の都合で」
築島「先輩、家賃の都合だけなんですか」
吉家「あ、いや。そういうわけじゃないけど」
文彦「いいなあ。阿部くん、やっぱり西荻に引越してきなよ」
阿部「アホ。おまえんちのすぐそばに住んだら、やっぱマズイだろうが」
文彦「マズイって、どこが?」
ダニエル「……なるほど、同居しているかしてないかによって、悩みも変わってきそうだな。司会者さん、そこらへんに的を絞ってみたらどうでしょう?」
毛利「一理ありますな。助太刀感謝いたしますぞ。では、そういうことで──」
 そこで、ロッドが手を挙げた。
ロッド「司会者さん、ぼくからもその点に関して」
シドニー「おい、何を言い出すんだ?」
ロッド「いいだろう? そういう会なんだから。それとも、やはりノブが通訳として聴いてるのが、気になるかい?」
シドニー「そういうわけじゃ……」
綱彦「おい、そこ。内輪もめしてないで。いいたいことを早く言いたまえ」
ロッド「横柄な副司会者だな。えー、じゃあ、ぼくの場合は、同居していた恋人が、別の男のことを思ってたわけで……」
伸行「……」
シドニー「ロッド、いい加減にやめろ」
ロッド「いいじゃないか。さらに問題は、その恋人も、ライバルの男も、とってもいいやつで、嫌いになれないってことだったんだよ」
伸行「……」
毛利「あの、通訳さん? なに言ってるのか拙者には……」
遼一郎「要するにだ。とんびに油揚げをさらわれそうになったが、彼はとんびも油揚げも好きだから、憎む相手がいなくて困った、ということさ」
毛利「なるほど。哲学的ですな。さすが遠野センセ(←ほとんどわかってない)」
ダニエル「気持ちはわかるな。ライバルがいい男だと、憎めない。だが、かえって、そのぶん、思いも増すかな」
ロッド「それは君の場合だよ、ダニエル。ぼくは逆に、あきらめよう、って思ったけどね」
ダニエル「なかなか難しい選択だね。他に同居していて、問題があったのは──トニー? 君は、同居をやめたんだよね」
クラーク「やめたわけじゃない。一時的に、別居してるだけだ」
ダニエル「君に質問してるんじゃないよ。トニーに訊いてるんだ」
アンソニー「一時的な別居のつもり……だけど、なぜ別居したのか、説明するのは難しいかな……。ちょっと頭を冷やしたくて」
文彦「頭を冷やしたい……って、どういう意味ですか?」
アンソニー「えっと、他のことが何も手に着かなくなってしまうというか……」
築島「その気持ち、なんとなくわかります。ねえ、先輩」
吉家「え……あ、そう? おれは……別に……」
築島「先輩」
吉家「あ、だから……」
綱彦「なるほど。篤史、じゃあ、君がぼくのマンションから出ていったのも、そういうわけだったのか」
篤史「はあ?(←突然、火の粉がふりかかってきたので、唖然としている)」
美雪「篤史、どういうこと? このおじさんと、篤史が?」
綱彦「おじさんじゃない。曽我部綱彦だ」
美雪「15歳から見れば、立派な、おじさんだよ。まあ、いいや。わけのわからないこと言ってるおじさんなんか、ほっておいてさ。篤史、も一個お寿司はどう? はい、あーんして」
篤史「あ、あのね、美雪」
美雪「いらないの? せっかく、ばーちゃんが」
篤史「でも、ほら、他の人たちは食事してないんだし……」
美雪「あ、そうか。皆さん、召し上がりませんか? 僕の祖母がつくってくれたんですけど」
篤史「あのね、美雪」
板倉恒之「どれどれ。ご相伴にあずかろうかな。へえ、これは見た目も綺麗な細工寿司だな。君のおばあさんのお手製かい?」
美雪「そうなんです。切り口が花の形になってるのとか、蝶々の形になってるのとか、いろいろありますけど……」
板倉「じゃあ、遠慮なく。この蝶々のがいいかな。この蝶々の形は卵焼きだよね」
美雪「はい、そうだと思います」
板倉「味もいけるな。どうやってつくるんだろう?」
岡崎「恒之ってば、座談会の席で、料理談義してどうするんだよ?」
板倉「いいじゃないか。何事も経験だ」
毛利「えー話がはてしなく脱線してきましたので、とりあえず、ここで、お食事をかねて1時間の休憩を」
シドニー「(立ち上がって)つきあいきれん。ノブ、帰ろうぜ」
伸行「シドニー、どうしたんだよ」
シドニー「アホらしくて、やってられん。それに、おれは捜査しなきゃいけない事件を山ほど抱えてるしな」
綱彦「捜査……って、君も刑事かい?」
シドニー「ニューヨーク市警察だが? 『君も』?」
綱彦「警視庁捜査第一課、曽我部警部補だ」
阿部「(文彦にささやいて)ってことは、親父さんの部下か?」
文彦「……になるのかなあ? あんな部下がいるって聞いたことはないけど……」

   大混乱で収拾がつかない集会場の片隅で、我関せずの薄笑いを浮かべた男がひとり──

◆◆同時刻、とある集会場の厨房では◆◆
清美「さてと。これで、お子さまランチができたかな」
聡美「まあ、かわいい。これ、あの坊やのぶんね」
清美「そうなの。聡美さんの散らし寿司も、美味しそうですね」
聡美「だといいですけど。あの子のお祖母様お手製の巻き寿司みたいなのは、私にはまだ無理ですし」
清美「大丈夫ですよ。それにしても……いったい、何の話をしてるのかしらね」
聡美「17名もの出席者を集めてるんですものね。司会者さん、さぞや大変なんじゃないかしら。それに通訳のかたも」
清美「そうですね。じゃあ、皆さんに息抜きしてもらうためにも、冷めないうちに運びましょうか」

★★というわけで、オチがつかないまま、この座談会は混乱のうちに、単なる食事会に変わったのでありました★★

 

==THE END== 

   
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禁・無断転載 柏枝真郷