21世紀初のお年玉

あけましておめでとうございます。
 今年も特別お年玉といたしまして、各キャラの新年の風景を実況レポートいたします。


日本のレポーター:毛利直樹(または占い師もーり)
「21世紀の幕開けに際し、謹んで新春の御挨拶を申し上げます。20世紀末には、柏枝真郷のHP『ACORN』並びに、拙者の占い小屋、おみくじ小屋をご贔屓くださいまして、まことにありがとうございました。本世紀もよろしくお願いいたします── と、いうところで、またしても柏枝の命令により、実況中継だそうで。じゃあ、近いところから順番に済ませていきますか」

さて──こちらは墨田区向島にある旅館・涼風荘。古い板塀をぐるりと廻って裏口を入ると、離れの玄関がある。
吉家「築島──なにやってんだよ? 早く行こうぜ」
築島「待ってください。このゴミを捨てたら最後です。これでよし、と」
吉家「大掃除しながら年越しだなんて、おまえらしいけど──20世紀が21世紀になったって、なにかが変わるわけじゃないだろ」
築島「先輩──それ、去年も、大掃除しない弁明に使いませんでしたか?」
吉家「そうか? 覚えてないなあ。去年はY2Kで忙しかったし、会社で年越ししなくて済んだだけでも、マシだったけど」
築島「世紀の変わり目のわりには、静かなお正月ですよね。さてと、浅草寺にお参りにいきますか。ひーじーちゃんたちも、もう来てるでしょうし」

毛利「二人揃って出てゆきます、どうやら、浅草寺に行くみたいですな。さて、次は──都下に行く前に、荻窪──は? 『荻窪はいい』って板倉さんと岡崎さんは? あ、なるほど、ふたりも浅草寺に行ってるわけですか。ってことは、鉢合わせですな。(笑いながら手を打ち鳴らす)柏枝も人が悪い。じゃあ、荻窪は飛ばして、隣の西荻ですな」

というわけで、中央線に乗った毛利は、西荻にやってまいりました。
毛利「ええと、ここが長谷川邸ですか。純和風ですが、古さの点では、センセのお屋敷にも勝るとも劣らないですな。しかし……なんか、拙者、『りぽーたー』というより、単なる『のぞき見』か『出歯亀』のよーな気分が……ぶちぶち」

長谷川の母「さあさ、阿部さん、たくさん召し上がってくださいね」
阿部「はあ──じゃあ、いただきます」
長谷川聡美「阿部さん、お雑煮のお餅はいくつにしますか?」
阿部「あ、じゃあ、2個──」
聡美「2個ですね。お兄さんも2個よね、お母さんと私は1個で、お父さんは?」
長谷川の父「私は1個で充分だ。お節料理も酒もあるし。阿部くん、一杯どうだね?」
阿部「あ、はい。じゃあいただきます」
長谷川「(にこにこと嬉しそうに、阿部を見てる)」

毛利「なんだか不思議なお宅ですなあ……。ま、一家団欒という感じでしょうか。さてと、じゃあ、日本のトリは、やっぱセンセのお宅ですな。不埒者の曽我部は、『はわい』とやらで年越しだそうだし、いったん阿佐ヶ谷のお宅にお帰りになった美雪ぼっちゃまも、そろそろ戻ってくるでしょうし」

ふたたび中央線に乗って都下へ──
21世紀になっても、霊園の隣にある幽霊屋敷は、変わらず不気味な雰囲気に包まれていた。すっかり葉の落ちた桜の樹々の枝が、太い蜘蛛の巣のように絡み合い、生け贄が罠にかかるのを待っているかのようだ。
朽ちかけた門を通り、毛利が進んでいくと、ちょうどスクーターに乗ったNTT職員が帰っていくのとすれちがった。
毛利「これは、いつもいつもご苦労さまです。本年もよろしくお願いいたします」
NTT職員「は? ああああ、えーと……(本年もよろしくって……。また今年も電報を運び続けなきゃいけないんだろうか?)」
 あやうくスクーターから落ちそうになった職員は、よろよろと門を出ていった。
毛利「正月なのに、せっかちな人ですねえ。さてと──」
篤史「あ、毛利さん」
毛利「あけましておめでとうございます。今世紀もよろしくお願いします」
篤史「今世紀……えーと、いまは何年だっけ?」
毛利「2001年、21世紀ですが──まあ、そんなことはいいいじゃありませんか。新作が出ない限り、登場人物は歳をとらない特殊能力があるんですから」
篤史「……ご都合主義だけどね」
毛利「なんか元気がないですね。それに、そのモップは? まだ大掃除ですか?」
篤史「これは杖の代わりというか……」
 なにやら腰が痛いらしく、モップにつかまるようにして篤史が廊下をもどってゆく。
毛利「腰痛ですか? 座りっぱなしのお仕事の人の職業病みたいなものですが、お仕事はもう終わったはずですよね?」
篤史「そうなんだけどね……(あの変態×ドめ!)」
毛利「困りましたね、せっかくのセンセのお誕生日なのに」
篤史「そのうち美雪が来るはずだから──」
 手首に包帯が巻かれた左手に握られた電報には、「アスゴゴツク」の文字が──
毛利「そうですね。でも美雪ぼっちゃまに、重労働はさせられませんし。ところで、肝心のセンセは?」
篤史「書斎」
毛利「おお、今年ももうお仕事ですか。楽しみですなあ」
篤史「……はあ……(また今年も、血みどろのイラストを描くのかと想像して、暗い気分になっている)」
毛利「おめでたい新年だというのに、辛気くさいですなあ。とにかくお祝いの準備をしないと。田作りは美雪ぼっちゃまがお持ちくださるでしょうから、いいとして──」
そこへ、玄関から元気な声──
美雪「あけまして、おめでとうございます!」

 (恒例の誕生日インタビューはDIARYのほうで)

さて──地球の裏側にあるNYとイーストリバー市。
日本より半日送れて、21世紀を迎えようとしている。

NY恒例、タイムズスクエアでのカウントダウン──いくら記録的な雪が降ろうと、大雪で交通麻痺になろうと、カウントダウンの行事は行われるらしい。
さらに、治安が回復し、安全な場所になったとはいえ、人混みで掏摸や置き引きが多発するのも変わらない。かくして、運の悪い警官たちは、例年のごとく警備に駆り出されているのだが──

シドニー「ったく、この寒いのに、暇な連中が、うじゃうじゃ集まってやがる。ヘンリー、そっちはどうだ?」
ヘンリー「いまのところは、これといって──昨年より混乱は少ないような気もしますが、気を抜けませんね。昨日はフィリピンのマニラで、高架鉄道の車両内や国際空港など計5カ所で爆弾が爆発して100人以上が死傷したそうですし……」
シドニー「政情不穏だからな……。アメリカも揉めに揉めた大統領選挙に決着がついたが、なにかあるかもしれん。そういや、日本でも暮れには、現金輸送車の強盗が連続したそうだぜ」
ヘンリー「文字通り、『世紀末』でしたね。今年はどうなるのか……。ノブは? やっぱりオプショナル・ツアーのバイトですか?」
シドニー「当然だろ。今年は『21世紀最初の初日の出を見るツアー』だとさ。高層ビルの上層階にある豪華レストランでカウントダウンのあと、初日の出を見るツアーだとか」
ヘンリー「21世紀最初の初日の出ですか。この雪で見られるんでしょうか? それにNYより日本のほうが日の出は早いはずですが……」
シドニー「半日もな。まあ、どっちにしろ、おれたちも夜が明けるまで、帰れそうもないがな」

同時刻──
銀白の雪をかぶったエンパイア・ステートビルの近くに、スカイ・トラベル社の観光バスが停まっている。いや、停まっているのではなく、渋滞で身動きがとれないらしい。
広瀬伸行「ったく、雪なのに、なんでここだけ渋滞になってるんだよ? カウントダウンに間に合いそうもないな──」
野々村清美「困りましたね」
伸行「仕方がない。こうしよう。歩いてもすぐだから、野々村さん、お客さんたちを連れて先にレストランに行ってくれるかな。ここからだと、レストランの駐車場より、事務所の駐車場までのほうが近いから、おれはこのバスを事務所に戻しておくよ」
清美「そのほうが良さそうですね。はじめから徒歩のツアーにしておけば良かったのかしら」
伸行「東京本社の企画だからなあ。お客さんが迷子になると困る面もあるんだろうけど」
清美「そうですね。私も注意して引率します。じゃあ、あとはお願いしますね」


さらに場所が変わって──(架空の街ですが、いちおうNYとは時差がないということで。(^^ゞ)
こちらはイーストリバー市。
ユアランド4丁目。繁華街から、まがりくねった裏通りを奥へと進んだところにある廃墟の街、ミラクルロード。
看板屋がまちがえて末尾の「E」を忘れてしまった、という、いわくつきの安っぽいネオンが輝くゲイバー「WILD」では──

「10……9、8、7、6」
「5、4、3、2……1」
「ゼロ! HAPPY NEW YEAR!」
集まった客たちが一斉に、歓声を上げたそのとき──
片隅のカウンターでは、
「ハッピーニューイヤー、デス」
緑の瞳に黒髪の美しい青年が、長いまつげを震わせながら、隣に座った長身の男にキスをした。
「新年おめでとう、トニー」
ハスキーボイスでささやいたその男は、青年をそっと抱き寄せて、キスを返した。

……ここは昨年と変わらず平和なようですが──あれ? そういえば、この街はもしかして、まだ21世紀にはなっていないのでは?

リタ「そんなこと、どうだっていいでしょ? うるさいわね。作中でも歴史の辻褄があってないくせに」
作者「あっ、痛いところを──」
ダニエル「遅筆のせいで新作も遅れてるしね」
作者「あっ。さらに痛いところを──今年中には、なんとかする予定……なんですけど」
ママ「まあまあ、とにかく、今年もよろしく。そちらはもう21世紀なんですって? どんな時代になっているのかしら? 素敵な一年でありますように!」

Wishing you health, happiness, and success as we enter a new Century !

   

皆さま、あけまして、おめでとうございます。
21世紀も、よろしくお願いいたします。
柏枝真郷

■HOME  ■NOVELS
Copyright © 2001 MASATO KASHIWAE All Rights Reserved
禁・無断転載 柏枝真郷